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名古屋高等裁判所 昭和54年(ネ)467号 判決 1984年5月30日

控訴人

原野産業株式会社承継人

更生会社原野産業株式会社管財人

佐藤文雄

右訴訟代理人

酒井祝成

後藤年宏

中田健一

被控訴人

相模アセチレン株式会社

右代表者

佐波準之助

右訴訟代理人

加藤隆三

主文

原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および立証は次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人)

承継前控訴人原野産業株式会社は昭和五六年四月一三日午前一〇時名古屋地方裁判所豊橋支部において更生手続の開始決定をうけ、同日同裁判所によつて控訴人が管財人に選任され、更生債権届出期間は昭和五六年五月三〇日までと定められた。

被控訴人は右届出期間内に本件請求債権について更生債権の届出をしなかつたし、その追完もしなかつた。その後更生計画審理及び決議のための集会が開かれ、可決された同計画案は昭和五八年一二月一〇日更生裁判所から認可(翌五九年一月五日確定)された。

(被控訴人)

控訴人の主張はすべて認める。

(当審における証拠)<省略>

理由

一承継前の控訴人原野産業株式会社が昭和五六年四月一三日午前一〇時名古屋地方裁判所豊橋支部において更生手続の開始決定をうけ、同日同裁判所によつて控訴人が管財人に選任されたこと、被控訴人は所定の更生債権届出期間内に本件請求債権の届出をせず、その追完もしなかつたこと、その後更生計画案は関係人集会の審理を経て可決され、昭和五八年一二月一〇日更生裁判所はその認可の決定をし、これが確定したことは、当事者間に争いがない。

二本訴請求は、被控訴人が、訴外ポーモ食品株式会社において昭和四九年六月一日振出した金額五〇〇万円、満期同年一〇月三日なる約束手形の所持人として、右手形につきなされた前記原野産業株式会社の保証債務に基づき同会社に対し右手形金の支払を求めるというのであるから、当審に係属中の本件訴訟が前記更生手続開始決定によつて中断したことは明らかである。そして、届出期間内に届出のなされた更生債権について右開始決定当時訴訟が係属し調査の期日において異議があつた場合の受継については会社更生法上規定(無名義債権につき同法一四九条、有名義債権につき一五二条)が存するけれども、本件の如く更生債権に関する訴訟が開始決定により中断し、しかもその後債権届出のなされなかつた場合の該訴訟の受継については同法上何らの定めも存しない。

しかしながら、更生債権者が届出期間内に届出をなさず、従つてその更生債権が更生計画によつて認められなかつたときは、更生会社は会社更生法二四一条によりその責を免れるのであるが、その法意は権利自体が消滅するというのではなく、更生会社に対し責任を追及し得ないということにあるものと解すべきである。従つて、かかる更生債権に関する訴訟は更生債権に関する訴訟としてその規定に従わしめる実質を失つたものの、当然には終了せず、更生債権に関しない訴訟に準ずるものになつたというべきであり、該訴訟が中断中であるときは同法六九条一項の類推により管財人又は相手方においてこれを受け継ぐことができるものと解すべきである。

三そこで、被控訴人の本訴請求について判断するに、本件手形保証債権は前記更生会社に対する更生債権であるところ、既に第一、二項において説示したように被控訴人において右債権について更生債権の届出をなさず、結局右債権は認可された更生計画において認められなかつたものであるから、更生会社原野産業株式会社は会社更生法二四一条によつて本訴債権につきその責を免れたものといわざるをえない。

よつて爾余の点の判断をするまでもなく控訴人の本訴請求は理由がないので棄却すべく、これと結論を異にする原判決を取り消し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(宮本聖司 竹田國雄 笹本淳子)

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